関節リウマチの予測
欧州の早期リウマチ研究グループからの報告では、関節が痛いという訴えで受診した患者さんの中で、2週間以内に診断がつかなかった関節炎を診断未確定関節炎(UA)と呼び、初めて受診した日に、一年後関節リウマチに移行するかどうかを予測する点数化を発表している。点数化する項目は、年齢、女性であるかどうか、炎症関節の大きさ、上肢か下肢か、左右対称か、朝のこわばり、痛む関節痛、腫れた関節数、血液検査でのCRP、リウマチ因子、抗CCP抗体である。例えば、女性で、上下肢の関節が5個痛み、4個腫れて、CRP1、リウマチ因子陽性、抗CCP抗体陽性ならば、一年後には84%の確率で関節リウマチに移行するので、初診時から強力に抗リウマチ剤治療を開始すべきだということです。この段階で治療開始すれば、治癒が望めるということでもあります。2008.10
超早期リウマチの意義
リウマチ治療の最終目標である治癒が実現可能な目標になってきました。生物製剤の導入による治療革命が起こったのです。
生物製剤と従来のリウマチ治療薬が決定的に異なる点は3点です。まずは関節痛や倦怠感など炎症に起因する症状の改善効果発現がすみやかなことです。2点目は従来なし得なかった関節破壊を阻止することです。そして最終目標であるすべての薬物治療を中止できるいわゆる治癒の可能性がでてきた点です。発症2年以内に生物製剤治療を開始したケースにその確率が高いこともわかってきました。
最近、発症3ヶ月以内の超早期にこの治療法を開始し、治療も短期間で終了するという試みが始まっています。治療費はかなり高額ですが、仕事や学業が継続できれば メリットが大きいことは確かです。これまで以上に早期診断の重要性が高まっています。 2008.9
リウマチと燃えつき症候群
燃えつき症候群とは長期間強いストレスの中で仲間や社会などの支えが不十分な場合に、達成感や満足感が得られないため、精神的に燃えつきた状態になることを言います。関節リウマチ患者さんの場合も、治療法が進歩してきたとは言え、完治する病気ではないことから、この状態に陥る危険性があります。関節の変形が進むのではないか、薬の副作用が現れるのではないか。毎日、そんなストレスと相対しながら治療に専念していたら、緊張に耐えられず、よくなりたいという願望も、生きるという気力さえ失ってしまいかねません。身体の疲弊感も危険信号。健康食品を次々と試すなど、病気と闘うだけに毎日を使わないこと。今年の目標、楽しい趣味を見つけ、焦らずに治療を継続すること。リウマチ治療は着実に進歩しているから。その第一弾。抗サイトカイン療法に期待を。
リウマチの新分類基準
これまでの診断基準では、リウマチの炎症は左右対称性で、3つ以上の関節に炎症を起こしていることが確定診断の必須条件でした。片側の手首だけの痛みと腫れで受診しても、リウマチではないと言われることが多く、民間療法に救いを求め、その結果関節が破壊されてしまったという患者さんをよく見かけます。また、リウマチ反応が陰性だからリウマチではない、逆にリウマチ反応が陽性だからリウマチである等の誤解がたくさんあったと思います。
新診断(分類)基準では、右手関節のみでも腫れを伴う痛みが6週間以上続いていれば、リウマチ反応や炎症反応を参考にし、関節リウマチと診断できます。他の膠原病等の可能性を否定できることという大前提はありますが、新しい診断(分類)基準は、早期治療を可能にし、関節破壊を阻止したいという強いメッセージなのです。
2009.12
リウマチ治療のゴールをめざして
関節リウマチに対する一般の認識は、20年前までと変わらず、不治の病、身体障害、寝たきりなどマイナスのイメージばかりです。しかし、その後の革命的な治療法の進歩により、現在は9割近くの患者さんが仕事、家事など通常の生活ができるまでになっています。治療を中止できるまでに回復する方は、まだ2割にも満たないのですが、早期に見つかり、適切な治療が開始されれば、治癒率は確実に上昇します。今は、治療費が高額すぎるため、治療法の進歩が一般に還元されないという厳しい現状があり、それを打破しなければなりません。
完全治癒を目指してアダリムマブ、トシリズマブ、ゴリムマブ、リツキシマブ、アバタセプトなど、新しい強力な治療法が続々と登場してきます。治癒という高い目標を達成するには、今以上に最適な治療法の選択と治療開始のタイミングが大切になります。
診断未確定関節炎の意義
発症2年以内の中等度から重症の関節リウマチに対してメソトレキセートとエタネルセプトという生物製剤の注射を併用した場合、1年後で4割、2年後で5割が寛解(病気が鎮まった状態)します。
関節破壊を予防するためにも早期確定診断が大切ですが、関節痛や全身痛のみで、ましてや血液検査でリウマチ因子が陽性というだけでで確定診断はできません。学会が定めた診断基準にのっとり確定診断しますが、基準を満たさない場合、診断未確定関節炎(UA)と呼びます。確立されたデータはまだありませんが、UAの2割程度に2〜3年後にリウマチと診断される患者さんが含まれます。治療開始が遅れないようにするには、UAの段階から定期的な経過観察が必要です。
UAの鑑別は、更年期障害、変形性関節症、橋本病などの甲状腺疾患、他の膠原病、腸炎性関節炎などがあります。 2008.3
リウマチの合併症と治療薬の副作用の違い
リウマチ治療は、革命的な進化の真っただ中にあります。強力な治療法が開発されたのです。有効性という光の部分がとても明るいだけに、これまで以上に影である副作用に注意しなければなりません。しかし、治療薬による副作用とリウマチ自体の合併症を混同してはいけません。副作用に関する不安感を取り除き、光を目指すには、治療法を熟知した医師の診察を受ける以外ないと思います。
一方、合併症に関しては、リウマチが関節に限定された病気ではなく、全身病であることを知れば理解できるでしょう。炎症産物が血管に蓄積して動脈硬化が進行し、脳血管障害や心筋梗塞のリスクが増します。 悪性リンパ腫の発現頻度など、寿命に関わる合併症の危険率も上昇します。薬物の副作用以上に、きちんと治療できなかった事による重篤な合併症の発現リスクは無視できな程高いのです。2008.2
抗リウマチ薬を見直す
関節リウマチは、軽症化しています。そのきっかけとなったのが、メソトレキセート(MTX)と言う免疫抑制剤間欠療法の発見です。
近年は、生物製剤を発症早期から投与すると、リウマチが治癒するのではないかという期待が高まっています。しかし、治癒する可能性はまだ全体の1割程度です。しかも、MTXの併用がないと高価な生物製剤の効果は半減します。人生を賭ける程の高価な治療法を、全ての人にあてはめるわけにはいきません。
リウマチ治療を成功させるには、有効性と経済性に優れたMTX、レフルノミド、スルファサラジンなどの抗リウマチ薬の効果を最大限引き出すことが大切です。これらの薬剤により、実際50%以上の患者さんで病気が治ったに近い状態になるのです。それでも関節の破壊が進むリスクがあると判断される場合、生物製剤の投与をすすめます。 2007.12
リウマチと更年期
関節リウマチ患者さんは、我が国で50万人以上と推計されています。その70%以上が女性で発病は平均45歳位です。つまり、更年期の始まる時期と一致しています。
更年期には、手足の静脈系の循環障害のため、手指が腫れぼったくなり、手足の関節の痛みを訴えます。患者さんのお話を伺うだけでは、リウマチでみられるこわばりや関節痛とよく似ています。厚生省が定めた早期関節リウマチ診断基準にあてはまることもよくあり、診断は慎重でなければなりません。
なぜリウマチは女性に多いのでしょうか。欧米では一時、避妊薬のピルを飲むとリウマチが軽くなるといわれたり、女性ホルモンのエストロゲンを投与されたりしましたが、リウマチの発症予防や進行抑制はできませんでした。治療が遅れると、関節が破壊されてしまいます。確かな診断と専門的治療が不可欠です。 2007.11
リウマチは軽症化している
関節リウマチの経過に関するオランダのリウマチセンターの報告によれば、最近5年間のデータに明らかな軽症化傾向があることが示されました。
その要因として、
1.強力なリウマチ剤が早期から積極的に使用されるようになったこと。
2.診断から抗リウマチ剤使用開始までの期間が短縮されたこと。
3.鎮痛剤のみではなく、抗リウマチ剤を使う患者数が多くなったこと。
が挙げられています。
最近では、約3割のリウマチ患者さんの病気の勢いを完全に沈静化できるようになりました。発病早期の患者さんに限っては、リウマチは身体障害を残すという社会の認識は過去の話です。
残念ながら障害を残してしまった方でも、海外旅行を楽しめるまで回復した方がたくさんおられる時代です。 2007.10