リウマチの早期診断と炎症反応の意義
早期診断・治療でリウマチの治癒をめざそうという革命的進歩の時代にあっても、依然として誤解されやすい検査があります。いわゆるリウマチ反応です。現在意義の異なる数種類の検査法が採用されていますが、いずれの検査が陽性であっても、関節リウマチと確定診断ができるわけではなく、ましてや治療が必要かどうかの判断材料にはなりません。関節リウマチの早期診断治療に重要なことは、関節炎(滑膜炎)の存在碓認です。 炎症碓認があって抗リウマチ剤投与がスタートします。関節リウマチの炎症診断に、重要なことは血液検査ではなく、原始的かもしれませんが、見て触れることで滑膜炎の存在を疑うことです。時には超音波検査で碓認します。血液検査は炎症の程度、骨関節破壊の広がり予測、治療薬の選択等、治療方針の決定に利用します。リウマチの炎症は複雑で、炎症反応の種類によって意義が異なるのです。 2010.7
リウマチ治療における生物製剤の使い分け
現状における最強のリウマチ治療薬である生物学的製剤には、それぞれに特徴を有する4種類がある。今回はそれらの使い分けに関するおおまかな基準について、私見をお話します。
基準の1番は、発症早期かどうかです。早期とは、関節破壊に至っていないという意味も含まれますが、その場合は、抗TNFα抗体製剤に分類される2剤があり、点滴注射か皮下注射製剤を選択できます。この2剤は1年以内の中止をねらっています。不幸にも関節破壊が進行してしまっている場合は抗TNF受容体製剤の選択があります。関節破壊の進展阻止と共に長期にわたる病状の安定をねらいます。中止することは、困難ですが、投与量調節が可能で、多剤と比較し、毎月の医療費自己負担を安く押さえることが可能です。その他、合併症を持っている場合、妊娠を希望される若い女性、併用すると有効性が抜群に上昇する免疫抑制剤の併用が可能かどうかなど、患者さん個々の状況によって選択します。抗TNF製剤3剤が無効の場合の4剤目の抗IL6製剤も非常に有効性が高く、5・6剤目ももうすぐ使用可能になります。リウマチ治療は飛躍的な進化の時代に入っています。2010.5
関節リウマチとよく似た手指の変形性関節
変形性関節症は背骨や膝関節に最も多く見られます。腰痛や膝関節の痛みや腫れで病院を受診される方が多いのですが、一般的には老化現象と考えられています。
指先の関節にヘバーデン結節と呼ばれる変形性関節症が発生します。この変化は遺伝的要素が関与しており、女性の発症率が、男性の約10倍です。
一方、指先から2番目の関節に発生した変化を、ブシャー結節と呼んでいます。この変化が見られる場合、変形性関節症の特殊型とされる骨びらん性炎症性変形性関節症と関節リウマチの鑑別が困難なことがあります。放置すれば両者ともに関節の破壊変形にいたりますが、リウマチによる変化であれば、破壊を止められるようになりました。しかし、骨びらん性変形性関節症の治療法はありません。初期診断が重要です。
2010.4
関節リウマチは滑膜炎で診断
関節リウマチ治療の飛躍的進化により、早期発見の重要性が更に強調されるようになりました。より的確な早期診断法の重要性が高まり、従来の多関節炎、左右対称の関節炎等の存在が診断基準から削除され、1つの関節炎でも、滑膜炎の存在を碓認できれば、検査値を参考にして、リウマチと診断できるようになりました。
滑膜炎とは、リウマチの関節炎の病理的表現であり、リウマチの診断は滑膜炎の存在を碓認することと言えます。従来は、経験のある医師が眼で見て、触って滑膜炎と診断していました。
最近、超音波診断法が滑膜炎診断に有効であることがわかりました。特に老化による変形性指関節症や更年期障害の関節炎と診断されている場合、不安であれば、検査してみるといいでしょう。リウマチの早期発見につながれば、その後の関節破壊を阻止できますから。
2010.3
リウマチ治療における生物製剤の使い分け
従来は、1987年の診断基準に合った場合のみ、リウマチと確定診断すると定められていました。例えば1時間以上続く朝のこわばり、3ヶ所以上の関節のはれ、対称性の関節のはれ、肘、膝などにみられるこぶ(リウマチ結節)、レントゲンによる関節破壊の存在等が必要でした。しかし、この段階まで待っていては遅過ぎます。
新診断基準では、1ヶ所の関節炎でも他の検査値や症状の持続期間を点数化することで診断できることにしました。同時に、他の膠原病や自己免疫疾患の可能性を否定できる医師のみにこの新診断基準の利用を限定することで誤診を避け、早期診断治療でリウマチの治癒をめざせという強いメッセージを発信しました。リウマチは不治の病という印象を与えた旧診断基準に別れを告げました。死ねない癌とまで言われ続けた歴史に終わりが近いと感じています。
2010.2
リウマチの新分類基準
これまでの診断基準では、リウマチの炎症は左右対称性で、3つ以上の関節に炎症を起こしていることが確定診断の必須条件でした。片側の手首だけの痛みと腫れで受診しても、リウマチではないと言われることが多く、民間療法に救いを求め、その結果関節が破壊されてしまったという患者さんをよく見かけます。また、リウマチ反応が陰性だからリウマチではない、逆にリウマチ反応が陽性だからリウマチである等の誤解がたくさんあったと思います。
新診断(分類)基準では、右手関節のみでも腫れを伴う痛みが6週間以上続いていれば、リウマチ反応や炎症反応を参考にし、関節リウマチと診断できます。他の膠原病等の可能性を否定できることという大前提はありますが、新しい診断(分類)基準は、早期治療を可能にし、関節破壊を阻止したいという強いメッセージなのです。
2009.12
リウマチ治療はバイオ製剤時代へ
欧州リウマチ学会が、リウマチ治療に携わる我々に対し、全てのリウマチ患者さんに、早期に、寛解もしくは低疾患活動性を達成させるようにと目標を明確に示したのです。炎症活動性を頻繁にモニタリングし、高い目標で、最適な治療法を迅速に選択せよというものです。それには、リウマチは不治の病という旧い意識の壁を、治る病気という認識への改革が必要です。かつて、癌の制圧に立ち向かった時代の様に早期発見の重要性と、高額でも強力な早期治療の導入が必要だという社会のバックアップを含めた意識改革です。
我々はバイオテクノロジーにより、レミケード、エンブレル、ヒュミラ、アクテムラの4つのバイオ製剤を手にいれました。さらに新薬が続々と登場します。この難病と言われた疾患の克服に向けて世界の頭脳が立ち向かっている革命時代なのです。
メデイア等での報道も、社会の意識改革に向けた取り組です。2009.11
進行したリウマチの治療
関節リウマチの治療は、生物学的製剤と呼ばれる画期的な治療法の登場で、発病二年以内にこの強力な治療を開始した場合、約2割の患者さんが治療を止めても再発しなかったという報告が多くなりました。
リウマチは発症後数年以内に関節が破壊されてしまう難病で、進行したリウマチは、生涯薬物治療は止められないのが定説でした。そのため、進行したリウマチで、生物学的製剤の投与を開始しても、生涯にわたる高額な医療費負担を考えて投与を躊躇さる方が多かったのです。
最近、日本で、進行したリウマチの生物学的製剤療法も中止できる可能性があるというトリプルR試験の結果が報告され、大きな評価を受けました。この強力な治療により、半年間病気の勢いを完全に抑え込めば、55%が薬剤投与を中止できたという報告です。高価な薬剤でも、約6ヶ月間に限って投与するという選択肢もあると思います 。2009.9
筋肉痛を特徴とするリウマチ
筋肉痛を訴えるリウマチ性疾患があります。発熱、食欲不振、だるさなどと共に太ももの筋肉痛、両側の上腕部、頚・背部の痛みを訴え来院する方がいます。その場合、関節炎に伴う筋肉痛なのか、筋肉痛そのものなのか、高齢発症の関節リウマチ、多発性筋炎などの膠原病、悪性腫瘍などの合併症がないかなど精査が必要です。
60歳以上で、朝のこわばり、血沈値高値、うつ傾向などを示す場合、リウマチ性多発筋症が疑われます。頭痛、側頭動脈の圧痛があれば、特にこの疾患の疑いが強いと思います。副腎皮質ステロイド治療が有効ですが、服用を中止することができない場合も多く、継続服用の場合は副作用に注意が必要です。検査的に炎症疾患が全くないのに、全身の筋肉痛を訴える線維筋痛症という病気もあります。うつ傾向の強い方で、多くは自律神経失調症状を伴います。2009.5.17
関節リウマチの痛みの考え
関節リウマチは多関節の痛みと破壊を特徴とする難病です。しかし、痛みと関節の破壊は一致しません。その為、痛みを緩和することは対症療法に過ぎず、関節破壊抑制作用のある抗リウマ剤治療が全てであるという考え方が生まれました。しかし、患者さんにとって一番辛いのは痛みです。果してリウマチ患者さんを苦しめる痛みの意義は何でしょうか。
我々は、リウマチの個々の関節における痛みの閾値(レベル)の変化に注目しました。その結果
、レーザー治療で痛みのとれない関節は、検査上では炎症反応が低くてもいずれ破壊されるリスクが高いという結果を得ました。現状の臨床検査だけでは個々の関節の破壊を予知できないのです。特に、臨床検査が正常化している場合の痛みのサインは、患者さんの治療薬(抗リウマチ剤)を見直す機会を教えているのです。
乾燥症状とシェーグレン症候群
眼の乾燥(ドライアイ)と口の乾燥が合併することがあります。その代表的病気が、シェーグレン症候群です。血液検査で、リウマチ反応が陽性、抗核抗体、抗SSA・SSB抗体が陽性になる等、全身性の免疫異常を伴う病気です。一般的に、疲労しやすく、不眠症、皮膚や陰部の乾燥、眼精疲労、眼の充血、眼痛、胃腸障害、よくカゼをひくとか、副鼻腔炎を繰り返す、歯肉炎、むし歯になりやすく口臭を訴える等の不快症状を伴います。この病気は、関節リウマチ等の膠原病も合併します。頚部リンパ節や唾液腺にリンパ腫が発症し腫れることもあります。
糖尿病や肝炎等でも乾燥症状を伴う場合があり、検査で確定診断しなければなりません。
一方、薬剤の副作用による乾燥症状もよくみられます。降圧剤、抗うつ剤、不整脈の薬、パーキンソン病の薬、胃潰瘍薬の薬等を服用している場合には、主治医と相談して下さい。2008.12