リウマチの生物学的製剤治療2012
関節リウマチ治療の最終目標は関節の変形破壊を残さず、治療を完全に終了することです。現段階における最新治療は間違いなく6種類の生物学的製剤治療です。すべて注射薬ですが、期待される効果が同じというわけではありません。
エンブレルという製剤は、薬剤投与不要な「治癒」を目指すべき発病早期段階の投与には向きません。発病後長期間経過した患者さんにおいて、関節破壊をその段階でストップさせ、関節痛、倦怠感などを取り去る目的ならばこの製剤がベストでしよう。
レミケード、ヒユミラ、シンポニーの3剤は、高額な生物製剤の中止、あわよくば薬剤中止完全治癒を目標とすべく、発病早期に投与開始すべきものです。他に先の4剤とは全く作用の異なるアクテムラ、オレンシアの2剤があります。病態に合わせたきめ細かな治療方針が立てられるようになりました。 2012.4
リウマチケア専門看護師
関節リウマチ診療が革命的進化を続けています。診療内容が複雑かつ高度化し、インターネット、健康テレビ番組をはじめ、情報が氾濫し、患者さんやご家族の皆さんが振り回されていると強く感じています。医療費も高騰しており、ご苦労されていると思います。
そこで、日本リウマチ財団認定リウマチケア看護師というリウマチケア専門職制度が発足しました。患者さんと直接対話し、病気や治療薬に関する様々な不安、家庭環境のこと、将来について、医療費のことなど、きめ細かく対応するためです。リウマチ治療の目標は単に関節症状を改善するにあらず、完全な社会参加をできるかぎり迅速に達成し、それを持続させることです。リウマチ専門医と連携し患者さんの事情にあったオーダーメイドの治療計画を策定し、その都度環境の変化に臨機応変に対応できるよう、患者さんをサポートしていきます。
2012.2
リウマチ性疾患における腫れと痛み
関節リウマチの主たる症状は関節の腫れと痛みです。しかし、関節のはれや痛みを訴える病気はたくさんあります。痛風や他の膠原病を含む多くの病気、老化に伴う手指のヘバーデン結節・ブシャー結節、膝の変形性関節症。更年期にもよく似た症状が見られます。それらをすべてまとめてリウマチ性疾患と呼んでいます。特に関節リウマチの場合、早期診断がとても大事でその後の経過を左右することになります。しかし、リウマチ性疾患はゆっくりと症状も出たり消えたりしながら経過することも多く、関節リウマチの確定診断に数年かかった方もおられます。
一方、関節の腫れだけで痛みを感じていない方の中にすでに関節破壊が進行していたという場合があります。関節のはれは関節破壊の危険なサインですが、破壊されないこともあります。その見分けには関節エコー検査が有効です。
2012.1
頑固な慢性の痛み治療の進歩
痛みの治療法が進歩しています。急性に起こる痛みは外傷など組織損傷による炎症が原因であり、それには消炎鎮痛剤がよく効きます。しかし、急性期が過ぎても持続する慢性期の痛みになると、大脳や視床などの中枢神経系の働きが大きく関与してきます。その結果、鎮痛剤の効果は薄れていきます。その場合には、局所の痛みの情報が脳まで伝わる経路に働いて痛みを和らげるオピオイド鎮痛剤が効果を発揮します。最近、貼り薬や消炎剤との合剤も登場し、使い易くなりました。従来の鎮痛剤では無効とされた加齢による変形性関節症による腰痛、膝関節痛、慢性腰痛、抜歯後の痛み、帯状疱疹後の疼痛など頑固な痛みを和らげます。しかし、モルヒネなどの麻薬の作用に類似したオピオイド鎮痛剤の使用法は特殊です。どこの医療機関でも使用されている薬剤ではありませんが、慢性疼痛で悩んでおられる方に朗報となれば幸いです。2011.11
先端リウマチ治療の必要条件
関節リウマチの治療法は劇的に進化し続けています。治療薬の新規開発スピードが速いことに加え、欧米を中心に検討される国際標準治療や先端医療が、我が国にも間髪を入れず取り入れられる体制にあることが大きいと思います。我々は、その情報をすぐに治療に反映させます。その結果として、今発病した10人の患者さんのうち2人はT年以内に完治、6人は治療の継続こそ必要ではありますが、病気になる前と変わらない生活が維持できるようになっています。
ただし、国際標準薬のメソトレキサートを発病後すみやかに十分量(16ミリグラム)まで増量できればという服用量最低条件をクリアしなければなりません。現在最先端治療といわれる生物製剤についても同様の条件を満たすことが必要です。残念ながら、B型肝炎ウイルス持続感染者や5年以内の癌治療歴がある方には適用できませんので工夫が必要です。
2011.10
変形性関節症とリウマチ
関節リウマチと似た病気はたくさんあります。中でも最も多いのが手指と膝の変形性関節症です。典型的な例において、我々が診断に苦労することはありません。しかし、一般に水が溜まっていると表現している膝関節水腫を排液してはじめて、リウマチと診断できたこともあります。変形性関節症は加齢に伴う軟骨の磨耗が原因です。
一方、関節リウマチはリンパ球を中心とした免疫異常による関節炎であり、血液病とも言えます。かつて白血病の治療薬であった免疫抑制剤が現在、関節リウマチの中心的治療薬になっています。リウマチは血液病なので、炎症物質が全身を回ります。痛みをおこす物質もその一つであり、風邪で高熱をだしたときに見られるような全身の筋肉痛や倦怠感をともなったり、微熱がでたりします。決して関節が痛いだけではありません。関節痛のみの場合、関節エコー検査で容易に鑑別できるようになりました。
2011.6
超音波検査によるリウマチ治療効果判定
関節リウマチの治療法は飛躍的に進歩しています。進歩の原動力となった生物製剤も、現在では、レミケード、エンブレル、ヒュミラ、アクテムラ、オレンシアの5剤を使い分けしています、さらに、これらの作用を最大限に引き出す免疫抑制剤メトトレキサートもようやく欧米並みの投与量が保険適用になりました。強力な治療法を手にしたことで、治療目標も高く設定され、炎症関節を一つも残さない治療戦略を組み立てなければなりません。
しかし、完全に関節炎が消失したかを判定することは困難です。関節エコー検査か関節MRI検査が必要ですが、簡便さや小関節の検査も可能という点で関節エコー検査が注目されています。その場で患者さんと一緒に治療効果を目で碓認できることが最大の利点です。この先、関節の破壊が起こるかどうかを眼で見て納得していただき、治療方針を決定するのです。
2011.5
リウマチと動脈硬化
動脈硬化の悪化要因は、加齢、糖尿病、高血圧、脂質異常、喫煙、慢性炎症、睡眠時無呼吸などです。中でも悪玉コレステロールが有名ですが、動脈硬化が進行すると、動脈壁が厚くなるだけでなく、プラークと呼ばれる隆起ができます。一般に頸動脈エコー検査で動脈の状態を把握できます。プラークが破裂し、中身がその先の血管に詰まると、心筋梗塞や脳梗塞になるのです。
関節リウマチは慢性炎症が持続し、AAアミロイドという急性炎症蛋白がプラークに溜まるため、一般人に比べ、死亡率が2.5倍高いという報告があります。リウマチに多いと思われるプラーク内血管新生もプラークを破裂しやすくする要因です。炎症を完全に抑制しないまま放置すると、寿命にかかわるのです。幸い、今やプラークを縮小させて破れにくくすることも、リウマチの炎症を完全抑制することも可能になっています。
リウマチ基本治療の革新
リウマチ治療の基本は、疾患修飾性抗リウマチ薬とよばれる免疫異常状態を是正する薬です。その中でも中心はメトトレキセート(MTX)です。リウマチ治療のエースで強力な抗リウマチ作用を持っています。現在最強の治療薬とされる生物学的製剤ですら、効果を最大限に発揮させるには十分量のMTXとの併用が求められます。しかし、これまで我が国の健康保険制度では副作用を恐れるあまり、MTXの投与量が世界標準使用量の50%以下に制限されていたため、十分に有効性を発揮するに至っていなかったのです。その中で、高額な生物製剤が導入された結果、医療費が高騰し、平均医療費がこの数年で約6倍に跳ね上がりました。そこで安価で強力なMTXの投与量を従来の2倍まで保険適用可能とするように変更されました。ようやく世界標準になります。今後は十分量のMTXと生物製剤の適正使用が標準治療になるでしょう。2011.3
リウマチ治療の原則T2T
リウマチ治療は大進歩をとげました。現在、少なくとも50%以上の患者さんにおいて薬物治療を継続しながらですが、関節は破壊されません。中にはプロゴルファーとして世界で活躍している人もおられます。治療法の進歩により治療目標がはっきりと定められ、目標達成の先に治癒を目指そうとしています。癌も早期に見つかればその多くは治癒します。リウマチもまたその時代に入っています。その為の治療原則が、徹底した病勢の抑制とT2Tと称されるTreat to Targetです。これは、病勢を完全に抑制するという目標達成の為に治療せよという意味です。目標達成の為、我々はリウマチのアンカードラッグであるメトトレキセートを始めとする免疫抑制剤と生物製剤(現在5種)を使いこなします。
T2Tを実践する為に、一人一人の患者さんの状態に合う治療法をオーダーメイドする時代に入ったのです。2011.1