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関節リウマチの治療

はじめに

 リウマチは長い間不治の病とされ、医師達の間ですら、50年前のリウマチ学のレベルで認識されており、その間の飛躍的な進歩に気付いている人は少ないように思います。ましてや、リウマチ熱という全く異なる疾患との混同が患者さんを混乱させ、不安におとしいれているという感さえいたします。リウマチ熱と関節リウマチは全く異なる疾患であり、ましてや、関節リウマチ患者の発熱をリウマチ熱と表現するのは誤りです。当然この2つの疾患の治療法は全く別のものです。とは言っても、関節リウマチが原因不明の難病であることも確かであり、根本的治療は見つかっておりません。しかし、悲観的に考えることもありません。かつて、不治の病と言われてきた関節リウマチは、生物製剤の登場とともに革命的な進化をとげつつあります。これから、リウマチの治療の現状と将来について、私なりの意見も加え紹介しようと思います。

目 標

関節リウマチ治療目標2015

  • 臨床的寛解維持 → 疼痛、腫脹、ADLの改善
  • 画像的寛解維持(構造的寛解) → 関節破壊抑制、骨びらんの修復
  • 機能的寛解維持(HAQ寛解)
  • 真の寛解 完全寛解
  • 生命予後の改善

目標達成のための治療戦略 T2T (Treat RA to Target & Tight control in RA)

 世界の2大リウマチ学会(ACR/EULAR)によって掲げられた関節リウマ治療の原則です。
 すべてのリウマチ患者さんにおいて、できる限り早期の寛解もしくは低疾患活動性を目指して厳格に治療せよ。そのために、頻繁に疾患活動性のモ二タリングを行い、高い目標に向かって最適な治療法を積極的に適用せよということです。
 目標達成に至らない場合は、同じ治療法を3ヶ月以上続けてはならないという意味も含む。そのために、患者さんと医師との間でT2Tの意義を共有することも大きな目標として掲げられています。寛解もしくは低疾患活動性の評価方法についても共有することを目標としています。


当院での評価法

当院での炎症活動性評価法の実際
(現在作業中 )


治療方法

 

治療戦略

 このコーナーでは、古典的な治療法(ピラミッド方式)について簡単に紹介するにとどめ、現在の治療戦略とその考え方(Sawtooth方式、step-down bridge方式)についてお示ししたいと思います。さらに最近提案された治療戦略について紹介致します。
古典的な治療法をあえて紹介する意味は、現在でもこの治療法が広く行われている現実があるからです。最新の治療戦略がすべて正しいというわけではありません。利点は大いに取り入れるべきと思います。

ピラミッド方式の考え方
診断が確定した段階では、まず、非ステロイド消炎鎮痛剤(NSAIDsと呼ぶ)
を使用。効果がなければ、いわゆる疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDsと呼ぶ)や副腎皮質ステロイド剤を追加していくものです。<br>
しかし、関節破壊は発症早期にすでに始まっており、治療目標を達成できないケースが多く、その反省に立って、積極的な治療戦略が生まれました。

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Sawtooth方式
 発症早期からDMARDsを開始し、効果がなくなった際(エスケープ現象)、次のDMARDsへとスイッチしていく方法です。多くのDMARDsが数年で効果 が低下していく為です。現在の治療戦略の代表的なモデルです。徐々にDMARDsの多剤併用へ移行していくケースが増える傾向にあります。

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Step-down bridge方式
 発症早期から、副腎皮質ステロイド剤、免疫抑制剤 を含む DMARDsを多剤併用し、炎症を抑制できた段階で、 強力なDMARDsから徐々に中止していく方法です。 実際に計画通りに行くとは限りませんが、発症早期から 炎症活動性が一気に高まるタイプには有用です。だだし、副作用に中止しなければなりません。 再燃時(右図×印)には中止薬を再び再投与します。

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最新の治療戦略T2T
治療戦略T2T

生命予後と合併症

RA患者の死因と一般人口統計の死因の比較

米国ミネソタ州の住民を対象に行した1965年〜2005年のコホート研究によれば、関節リウマチ患者さんの死亡率は、一般人口に比較し、著しく高く生命予後は改善されていないと報告されています。
2006年以降の報告はまだみられませんが、生物学的製剤の普及につれて、関節リウマチ患者さんの寿命も大きく改善することが期待されています。
関節リウマチ患者さんは動脈硬化の進行が早いことが指摘されています。しかし、最新の治療戦略により一般人口の寿命に近づくことが期待されています。
RA患者の死因と一般人口統計の死因の比較

関節リウマチの生命予後と抗リウマチ治療 ー生命予後に対する動脈硬化の影響ー

MTXを使ったグループは何も治療しなかったグループに比べ死亡リスクが1/5になることを示しています。
さらに、MTXと生物学的製剤を使用したグループは、両者の治療薬投与を受けなかったグループに比べ、致死的リスクが約60%に減少したことを示しています。積極的に治療すれば寿命が伸びることを指しています。
生命予後

関節リウマチとアミロイドーシス

 関節リウマチの生命予後を悪化させるアミロイドーシスは、TNFα, IL-6, IL-1などの炎症性サイトカインを高値のまま放置した結果であり、従来のRA治療の問題点です。とにかく炎症を抑制しないと痛みだけの問題ではなく寿命に関わるということです。

関節リウマチと動脈硬化

 動脈硬化は虚血性心疾患(IHD)などの冠動脈心疾患(CHD)や脳血管障害、IHDによる収縮障害性心不全、弁膜性心疾患(VHD)、拡張障害性心不全などの発症過程の初期病変と位置づけられれます。一般に、炎症はCRP 0.2mg/dl 程度で動脈硬化のリスクを上昇させると言われています。RAは慢性的に高度の炎症状態が持続する疾患であり、動脈硬化リスクの上昇した状態です。 CRP値は現在いくつでしょうか。

関節リウマチにおける頸動脈超音波検査の意義

  • 関節リウマチ患者さんでは頸動脈IMTの著しい肥厚をみとめます。原因はアミロイドの沈着ではないか(Ciftci O, 2008) という報告があります。
  • 関節リウマチ発病4年以内に、動脈硬化発症リスクが上昇(萩原敬史他, 2009) するという指摘もあります。